このまま温暖化が続いたら北極や南極の氷がすべて融け,海水面位置は上昇し,世界中の多くの国で水害や気候的な災害が起こることになるだろう・・・みたいな研究は,現場重視の基礎研究をやっている者からすると到底好感を持つことなどできないわけですが(いかようにもシミュレーションできるわけですから),国もマスコミも一般の人も,興味を持つのはこの手の研究なんですよね.だから知っておいて損はないというか,僕はむしろ知っておくべき研究なんだと思います.GRLに論文があるということだったので(link),とりあえずアブストラクトだけ読んでみました.以下に適当に和訳したものを載せておきます.「これはあくまでもシミュレーションの結果にすぎない」という事実を踏まえた上で,興味があればお読みください.
我々は数値モデルにより夏季における北極の海氷の軌道を計算し,海氷の急激な減少が21世紀のシミュレーションに共通した問題であることを見いだした.シミュレーションによる北極海の9月の海氷域の減少量は,比較可能な観測データによって導かれた傾向より4倍も大きい.あるイベントは10年間で600万平方キロメートルから200万平方キロメートルにもおよぶ海氷面積の減少を示しており,2040年の9月には海氷が全く存在しないに等しい状況に到達するとしている.シミュレーションの中での海氷の後退は,融解を助長する開水面の増加による氷厚の減少と,日射(短波放射)の吸収を高めるアイス・アルベド・フィードバックにより加速される.海氷の後退は,北極への海洋熱輸送が急激に増加した時に突然生じる.複合モデル等による解析は,突然の海氷減少がモデルの50%以上で起こる事を示し,その一方で,今後における地球温暖化ガスの放出の減少が,これらの出来事が実際に起こる可能性を抑制することを示唆している.
ちなみに,開水面の面積が増加すると海氷の融解が助長される理由は,水面の方が海氷より反射率が低いため,日射を多く吸収して水温上昇が生じるからです.アイス・アルベド・フィードバックとは,アイス(海氷)が日射の吸収や気温の上昇により融け始めると,アルベド(反射率)が低下するためより多くの日射を吸収するようになり,融解が促進される・・・融解が促進されると更に日射を多く吸収するようになるため,融解がより促進される・・・というサイクル(フィードバック)の事を言います.
前述の通り,僕はこの手の研究にエールを送る気にはなれないのですが,この論文の主著者(マリカ・ホランド)には激励の言葉をかけたいと思いました.なぜなら彼はアメリカの研究所に所属しているにも関わらず(それも有名な研究所),温室効果ガスの放出を抑制するよう働きかけているからです.ブッシュは未だにCO2などの温室効果ガスと近年の急速な地球温暖化は全く無関係であるというスタンスを崩していません.確かに,温暖化に直接結びついているのは水蒸気であり,産業革命以前にも顕著な温暖化が生じたことからも,「人為的な温室効果ガス放出=温暖化促進」とするのは短絡的であると僕も思います.しかし「アメリカが(ブッシュが)それを言うな」と言うことですよ.アメリカと中国はそんなことが言える身分ではないはずです.とにかく,マリカ・ホランド氏がアメリカ政府から圧力をかけられ,今後の研究に支障が出るような事態にならなければいいと思います.
北極の氷、2040年には無くなる可能性=米研究者
[サンフランシスコ 11日 ロイター] 地球温暖化により、北極の氷が早ければ2040年の夏にも溶けて無くなる可能性があるという研究結果が明らかになった。米国の研究チームが12日付の学術誌「Geophysical Research Letters」で発表する。
地球温暖化により、北極の氷が早ければ2040年の夏にも溶けて無くなる可能性があるという研究結果が明らかになった。米国の研究チームが12日付の学術誌「Geophysical Research Letters」で発表する。
米コロラド大学にある国立雪氷データセンター(NSIDC)のマーク・セレズ氏は、地球温暖化の影響が深刻になりつつあると指摘。また国立大気研究所(NCAR)のマリカ・ホランド氏は、温暖化によって北極の氷が遅いペースながら着実に減っていき、向こう20年以内に劇的な「転換点」を迎えるとの予想を示した。
研究によると、北極海の氷が縮小する速度がこの20年のうちにこれまでの4倍にまで速まるおそれが確認されたとしている。また、スーパーコンピューターを使った試算では、最短で2040年夏には北極点の氷さえ溶けてしまう可能性が示された。
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