Apr 29, 2007

現在の日本で出世より安定志向は正常でしょう

日本の高校生に出世より安定志向が多いのは,むしろ正常な傾向に思います.同記事で日本の次世代リーダー養成塾の加藤氏は「出る杭を打つ平等教育を進めてきた結果ではないか。豊かになって親が過保護になり、子どもの独立心が薄れた影響もある。親は子離れしたほうがよい」と,この結果について見解を示していますが,僕は全く違うと思うのです.出る杭を打つ平等教育は戦前からずっと続けられてきたものであり,言わば日本の文化です.しかし戦後の日本はちゃんと復興し,そればかりでなく先進国の仲間入りを果たしました.平等教育の中にも子供の独立心はあったのです.ではなぜ最近の日本の子供達に独立心や出世欲が薄いのか.それは現在の社会制度にあるとしか思えません(子供の数が減り,過保護な親が増えた原因もここにあると思います).

欧米の上っ面だけを真似したよく分からない実力主義社会もどき.これにより年功序列や終身雇用は崩壊し,徐々に格差が生まれています.「末は博士か大臣か」と言ったって,今の世の中では博士になっても職はありません.職がないということは,必要とされていないということであり,すなわち博士は社会から認められていないと言うことです.文科省は博士を量産するだけしておいて,受け入れ先を全く用意していない.こんな状況で博士の学位を取りたいと思えるのは,先を考えない無法者か,金持ちのいずれかでしょう.高校生の段階でここまで気付くのは難しいかもしれませんが,出来る子ほどこの世界に夢も希望も見いだせない事に気付くでしょうから,博士の質も落ちることは容易に想像が付きます(それでも博士を取ろうとしている者としては,博士課程に進んだ事は全く後悔していないし,いろいろ面白いので後輩には勧めたい気持ちはあります.しかし職がないのは明らかな事実なので,その後輩の行く末を思うと責任を感じるため,強く勧めることはできません).

昔は安定した職に就くより出世する方が難しかったでしょう.ですが現在は,まず安定した職に就くことが難しい状況です.出世なんて二の次三の次.安定した職に就いていないのに出世も何も無いのですから.若者は,そこまで将来を見据えて考えることができるほど,現在の社会制度に余裕を感じていないのです.「とにかく出世なんてしなくていいから,安定した身分と収入を手に入れ,最低限の人間らしい生活を送りたい.それが出来なければ結婚も出来ないし,たくさん子供を作って育てることもできない」.多くの子供達はこんな風に考えざるを得ない現状にあるのです.今回の調査はこのことを如実に表した気がします.だからこそ正常な結果だと思えるのです.

日本の高校生、出世より安定志向 日米中韓調査

「末は博士か大臣か」という言葉は今や死語?。「偉くなりたい」と強く思う高校生は8%しかおらず、米中韓の3、4分の1にとどまっていることが、財団法人「日本青少年研究所」がまとめた調査で分かった。同研究所では「平等社会のなかで現状満足志向が強い。このままでは社会全体の活力が失われる。将来の目標を持ってほしい」としている。

社会から無視される職のない博士(しかも多くの素晴らしい研究成果が一般社会において全くクローズアップされない),問題発言ばかりやって肝心な政治家としての発言はお粗末な大臣・・・.どう考えても憧れの職業(地位)にはならないでしょう.「末は博士か大臣か」という言葉がいつ生まれたのかは知りませんが,完全に死語であり時代遅れです.これに代わる現代版の言葉を,みうらじゅん氏あたりに提案していただきたいものです.


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