Mar 19, 2005

研究畑でのキャリアアップ

我が国において,これから研究者として飯を食っていこうとしている若手には終身雇用はほぼ望めません.30歳前後で博士の学位を取得し,その後はポスドクとして1年更新の3年契約などで研究所を転々とするのが一般的です.だけど業績や運によっては契約満了後に失業する可能性もあります.博士号を持ったコンビニ店員(バイト)が誕生する瞬間です.

研究者の世界と切込隊長が書いてる世界ではだいぶ状況が違うと思います.でも隊長のエントリーを読んで根本は同じであるように感じました.研究者の世界において「狭く深く自分の研究だけに没頭していればいい」時代はとっくに終わりました.こんな人間は研究者としてやっていけません.自分の研究の特色や成果を分かり易くプレゼンして研究費を稼いだり,特許を取得したり,企業と提携してプロジェクトを遂行したりできなければ相手にされません.もちろんノーベル賞級の研究者であれば話は別かもしれませんけど.この辺りの事は隊長のエントリーからも感じました(以下).

だから、派遣社員としての年齢雇用制限を越えた30歳ぐらいの人たちが大量に余る現象に直結しているんだとも思う。やはり彼らは商品価値を前提に人材派遣会社で訓練されたパーツのような働きをすることに慣れてしまっているようにも感じる。でも、雇う側として本当に欲しいのは、もちろんスキルや情熱といったものもあるけれども、その人が仕事を通じて何を実現しようとしているのか、何にこだわりを持っているのかといった、人間としての何かを求めているかにほかならないのです。

R30さんが「ほとんどの人が転職せずに1つの会社を勤め上げて一生を終えるという時代は、もはや終わったということなんだろうと思う。理由は、簡単だ。1つの会社が40年間継続して成長するなんてことはほとんどまれである、ということにみんなが気がついた。それだけのことだ。」と言及しているのに対し,隊長が「そりゃあ40年なんて成長を続けられるほどの体力も実力も自信もないのは仕方ないけれども、雇われる側に「ひとつの会社を勤め上げる時代は終わった」と言われてしまう雇い主ってのは、物凄く悲しいと思うわけですよ。」と意見しているのはとても考えさせられます.僕はどちらの意見に賛成とか反対ってわけじゃないんですが,なんていうんだろう・・・自分の意思で転職するんならいいと思うんです.だけど我々研究者の世界は本人の意思とは関係なく,契約が満了したからという機械的な理由だけで転職を強いられる.あと数年間腰を据えて研究をやりたいと思っても,その願いは叶わないのです.それどころか職を失う可能性だって存分に秘めています.

研究者の世界で言うところの「職場を転々としてキャリアを積む」という「キャリア」には,なんとも後付け的且つ言い訳的な印象を受けるんですよね.じゃあ職場を転々としなかったらキャリアは積めないのか?そんなことはないでしょう.直接金儲けにつながらないからという理由で,基礎的な科学研究費の予算を削減したい国の言い訳に聞こえてなりません.だけど基礎研究がしっかりしていないのに,その先の研究ができるでしょうか.基礎が不安定な家はすぐ壊れる.これと同じ事です.

そもそも「職場を転々としてキャリアアップ」という考え方は,アメリカなどの海外から輸入されたものです.日本はこれを真似ているだけ.しかも「職場を転々としてキャリアアップ」できる環境やバックグラウンド,人々の意識や考え方が伴っていないのに,うわべだけを無理して真似ている状態.これでは雇う方・雇われる方の両者に不具合が出て当然です.キャリアアップという言葉やイメージだけが先行している現状を根本から見直さない限り,いろんな矛盾やすれ違いが生じて混乱が続くでしょう.「木を見て森を見ず」ならぬ「森を見て木を見ず」状態を何とかしてくれ(最後は人任せw).

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