前回の「極上の月夜」では美輪明宏氏の特集が組まれ面白かったです.僕の嫌いなウエンツが相変わらず寒かったり,美輪氏が真剣に話している最中に三宅裕司が余計なちゃちゃを入れたりと邪魔な部分も多かったのですがそれはさておき・・・.例えば「とりあえず結婚してみたいし子供もとりあえず作ってみたい」と真顔で言い放つ女に対し,美輪氏は「結婚式は夢との告別式で,純白のウエディングドレスは死に装束である.周囲で「おめでとー!」と騒ぎ立てる友人・知人は悪魔.昔は出戻りするくらいなら死ねという意味で短剣も持たされた.本来結婚というのはそれくらい覚悟してせねばならないもの.また,子供はいつも犠牲者.勝手な親のせいで不幸な子供が増えている」と一喝.これだけでも見ているこちらはスカッとした気持ちになり,若干テンション高めで膝を叩いて同調したわけですが,その話の直後に入ったCMでは,ウエディングドレスを着た若いお姉ちゃんが,人生で最高とも見て取れる浮かれきった笑顔を見せていてかなり笑えたのでした.言ったそばからアレというのは,どう考えてもスポンサーのミスでしょう.その他で面白かったのは,色についての話で赤ちゃんに触れたときのことでした.「赤という色はエネルギーの色.つまりエネルギーの塊が赤ちゃんなのだ.一方,黒は悪魔の色.だから黒ちゃんとは言わない」と美輪氏は言及しました.ところが安田大サーカスには黒(クロ)ちゃんがいます.僕はクロちゃんが全否定された瞬間を見てしまったわけです.何とも言えない,いたたまれない気持ちになりました.
一番印象深かったのは,ついつい子供を叱ってしまうという母親の相談に対する美輪氏の見解でした.「子供を叱るにも資格がいる.あなたは子供を叱ることができるほどの人間ですか?子供は親のロボットではないのだから,理不尽に命令しても憎しみが生まれるだけ.「親だから」というだけでは子供を叱る資格があるとは言えない.」
親になることなんて子供を作ればいいだけですから,パートナー選びの問題を抜きにしたら,健常者にとっては特に難しいことではないのです.問題は,子供を作ってから育てていく段階にあるのです.ここで子供を叱るにあたっての資格が問われる.教育的なしつけをする中で,子供を叱るという行為は絶対に必要です.しかし子供は親を常に見ているわけで,親がやっていない事をなぜ自分が「子供だから」という理由だけで(無理矢理)やらされなければならないのだ,と疑問に思っても不思議ではありません.またもし子供が親の過去を見ることができたとすれば,自分の親が子供の頃にやっていなかった事をなぜ今になって僕(私)がやらねばならないのか,と感じるはずです.そんなタイムマシーンのようなものが無くても,例えば自分(親)が勉強嫌いで遊んでばかりいたことが理由で中卒なのに,それを棚に置いて偉そうに「お前は東大へ行け」と自分の子供に勉強を強制すれば,子供としては「ハァ?」と反抗心むき出しになっておかしくありません.
井上陽水氏の歌に「人生が二度あれば」というのがありますが,自分の子供は自分の二度目の人生ではありません.つまり「自分がもし生まれ変わったらこんな事をしたいなぁ」という夢や欲望を自分の子供に強制するのはナンセンスなのです.そんな親の無理強いに子供が反発したとき,親が子供に対して怒鳴り散らすなんてことはもってのほか.子供は「こんな家に生まれて来なければよかったのに!」とか言いだし,そこからは道徳の時間に見た「さわやか三組」的な世界が始まることは間違いありません.それだけなら別にいいけど,これがきっかけで何かしらの事件に発展する可能性が十分含まれているから危険なのです.
先にも触れた通り子供は犠牲者です.親を殺す子供や簡単に犯罪を犯す子供,それから自殺する子供が増えているのは親の責任と言えます.学校内で起きるいじめ問題だって,原因の根底にあるのは多くの場合で親と家庭のはずです(いじめる方もいじめられる方も).例えば最近起きた長野県の女児行方不明事件だって完全に親が悪いではないですか.小学生の女児が外泊するというのに,厳しく行き先を問うこともせず野放しにするのは異常としか言いようがありません(無事保護されたことは結果論に過ぎない).しかし親は責任転嫁をして地域や学校のせいにする.学校は学校で独自の閉じた世界を形成し,教育委員会と共に自分たちの立場をいかに守るかで対応を決める・・・.大人がアホだから社会がアホになり,そこで育つ子供もアホに育つ.そして今後もその繰り返し.だったらこんなくだらない世界,北朝鮮にテポドンでも打ち込んでもらって一度ご破算にしてしまったらどうだろう・・・などと,ちょっと本気で思ってしまいます.余談ですが,このような破滅的な思想はフォークソングっぽくて僕は大好きです(ロックっぽくもあるけど).
日本国内・国外問わず,知らない土地へ行くと自分の小ささに気付くことがたまにあります.美輪氏の話はそれに似た感覚を聞き手にもたらす効果があると僕は思っています.同番組では「愛の讃歌」を歌われましたが,僕が一番好きなのは愛の讃歌でもメケメケでもなく,ヨイトマケの唄です.できればこれを歌ってほしかった.サザンの桑田氏など,他の歌手ではダメなのです(サザンは大好きですが,この曲に関してはダメ).美輪明宏が歌うヨイトマケの唄でないと,同曲から発せられるガツンとくるメッセージを正確に受け取ることはできません.ヨイトマケの唄に描かれる親(実際は母親だけどここでは親とします)と子供の関係が少しでも現代社会に反映されてからでないと,愛の讃歌による効果が100%発揮されない気がします.それはまるで,豆腐を基礎にして高層ビルを建てるようなものです.
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