Oct 26, 2005

ニートや引きこもりを追いつめるエール

「若者の人間力を高めるための国民運動」のイベントが東京で行われたそうです.同イベントは,ニートや引きこもりなど問題が増えている若者を支援しようという趣旨に基づき,経済界や労働界などでつくられた「同国民会議」(議長,奥田碩・経団連会長)が主催.ニートや引きこもりがこのようなイベントに参加するとは思えませんが,眞鍋かをり,柔道の野村忠宏選手,それから歌手の川嶋あい見たさに約300人の若者が集まったらしいです.

各ゲストは,ニートや引きこもりを含む若者に向けてエールを送りました.それぞれのエールは以下の通りです.

■眞鍋かをり
社会に出て大人として働くためには、能力よりも先に人間力が必要。若者のみなさんは、自信を持って、人間力を高めて、生き生きとした生活を送って

■野村忠宏
目標を持って自分を奮い立たせてください

■川嶋あい
夢を一つは持って、火の中に飛び込む意気込みでがんばって

三者三様なエールなのですが,僕は川嶋さんのエールがひっかかりました.すでに何らかの目標があり,それに向かって少しずつ前進しているような若者に対して発せられるとしたらまだいいのですが,これがダイレクトにニートや引きこもりの若者に向けられるなら,かなり思いやりのない身勝手な発言だと思うからです.これはまさに,30階建てのビルの屋上から今まさに飛び降りようとしている者に対して「そんなところから飛び降りるだけの勇気があれば何でもできるだろう!」と言うのと同じ事だと思います.これは僕の一番嫌いな考え方です.何の解決にもならないし,それどころか更に状況を悪化させる可能性を多分に含んだ発言なのです.

僕は川嶋あいという人を全く知りませんので,軽くウェブで調べました.彼女は歌手で,路上ライブを1000回やり遂げているのですね.「自分は路上ライブを1000回やるという夢(目標)を持って,それに向かって火の中に飛び込む意気込みで頑張ってきた.そしてそれを達成した.だからみんなも同じような意気込みで頑張って!」という思いが,今回の彼女のエールには多少なりとも含まれているのだと思います.しかしニートや引きこもりを続けている者に対して,こんな精神論が通用するとは思えません.そのニートや引きこもりが川嶋あいの大ファンならまだ見込みはありそうですが,それでも現実は厳しいだろうと思うのです.

だいたい「がんばって」という言葉は非常に無責任なのです.言われた方は,まるで自分が何も頑張っていないかのような錯覚に陥ります.もちろん何も頑張っていないニートや引きこもりはたくさんいるでしょう.でも彼らの中には自分なりに頑張っている者も結構いると思うのです.そんな彼らを「がんばって」という言葉は全否定しかねません.僕が彼女のエールとも取れない発言に「思いやりがない」と感じた理由はここにもあるのです.きっと彼女に悪気はなかったはずだし,本当は凄く優しい人なのでしょうが,この一件に関しては「頭の悪い冷たい人間」という印象を僕は得ました.

[眞鍋かをり]ニート、引きこもりにエール

「若者の人間力を高めるための国民運動」のイベントが26日、東京都千代田区の東京国際フォーラムであり、タレント・眞鍋かをりさんと五輪柔道三連覇の野村忠宏さんが若者にエールを送り、歌手の川嶋あいさんが応援ミニライブを開いた。

<関連リンク>
川嶋あいさん/シンガー・ソングライター
東京生活(1行感想系=こんなこと考えてみたりして)

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