May 22, 2007

「博士=研究者(orキモヲタ)」から脱するのススメ

博士号取得者のその後については様々な言い分があるでしょうけど,極めて多くの博士が就職難民と化している現状は明らかな事実です.「安定した職に就けていないポスドクは2万人を超える」というasahi.comの記事は,決して大袈裟なものではありません.しかし博士課程まで進む人は,普通は「博士号を取得してもその先に職はない」ということを承知の上で進学するのであって(少なくとも僕はそうでした),随分前からこうなることは予想できていたはずです.「単純に研究が好きだから博士課程に進む.その後はどんな職業に就く覚悟もできている」という心構えで進学したはずなのです.ところがいざ博士の学位を取ってみると,やっぱり研究職で飯を食いたいと思う人が多いし(それは,研究が面白いから),大学や国の研究機関で研究職に就くしか生きる道は無いと自分で自分を評価してしまう人がほとんどなのです.もちろんその拘りは素晴らしいことだし,持っていて悪いものではないと思います.でも,ちょっと視野が狭すぎやしないかという気もします.というか,もったいないと思うのです.「博士の学位を取ったから研究職に就く」以外に,もっと選択肢を増やすべきではないでしょうか.「博士の学位を取ったから中高の教員になる」とか「企業で分析力や考察力を発揮する」とか「NPO法人で一般人向けの講演を行う」とか「報道機関で専門的な記事を書く」とかなんとか.僕の近くにいるある人は「博士号を取って民間企業に就職するなんてもったいない」と言い切りましたが(来春から僕がそのような身分になる予定だから),むしろ自分で自分を過小評価するようなその考え方がもったいないし,時代遅れだし,そもそもお前はポスドクも民間企業で働いた経験もないくせに分かったようなこと言うなよ!アホ!・・・と心の中で思った次第です(バナナ大使的イニシャルトークでもバレそうなので,詳細にはモザイクをかけておきます).

で,このことには「受け入れ側」の体制(意向)も関わるので,自分で勝手に就職の選択肢を増やしたからといって,それが実際の受け入れ先増加に繋がるとは言えません(そんな単純なものではない).博士の受け入れに積極的な企業が少ない理由は,一般的な博士とか研究者のイメージにあるのではないかという気がします.それというのは,恐らく「いわゆる一般社会ではやっていけない,理屈っぽくてクセが強くてキモい人間」程度でしかないのだと思います.これに加えて,30歳近い年齢(でも社会人経験はゼロの新入社員),融通の利かない思考回路(プライドも高い),長い学生生活で培われた常識の無さ(でもプライドは高い),みたいなものが挙げられるはずです.まあ実際そうじゃないかと言われれば思い当たる節は多々あるわけですが(僕は自分の成長を妨げるプライドなら持つべきではないと思っていますが),こんなことばかりが先行し,博士が持つ本来の力や付加価値が社会の中で全く評価されていない現状というのは,本当に悲しい限りです.これが改善されない限り,博士の学位を持った人間の受け入れに対する企業側の消極的な姿勢は変わらないでしょう.いや,企業だけではありません.日本の社会全体が博士の受け入れに消極的なのです.その理由は「博士って何なの?」という基本的なところがあまりにも理解されていないことに尽きると言えます.世の中に対して影響力を持つ偉い人たちや,博士を持つ個々の人たちは,ここをもっとアピールすべきではないかと思うのです.さもなくば,博士号を持った就職難民は今後も増え続けます.「いずれここにも少子化の波が押し寄せるから,放っておいても大丈夫だよ」みたいな,ある意味将来を的確に捉えた考え方は是非ともやめていただきたいと思います.


Posted at 21:25 in 主張・考察・その他 | Permalink | No Comment | | edit

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